#1 朱

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「んぐ…」 彼はきちんとした理性を取り戻しつつある中、自分の身に起こっていることも理解し始めたらしい。 キスを、されている。 「んぅ…あ、や、やめろ…!」 思いっきり突き放される。それでもおれの方が力が強いため、数センチ離れただけだった。 彼の瞳を見ると、見開かれた。 驚いて、口を半開きにし、彼はぼーっとおれを見つめていた。 「あ…悪魔…」 「残念。おれは、吸血鬼だ」 「ああ…そう…」 疲れた顔をして、彼は目を閉じる。無抵抗なのは、どうしてだろう。普通、あっちへ行け、とか、化け物、などと大声で非難するはずなのに。 おれを見て、驚いて、他に何もしないのか? 「君は、おかしいんじゃないか」 「…え?」 「どうしておれから逃げようとしない」 「どうしてって…解らない、訊かないでくれ」
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