3 理央の家

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3 理央の家

 最後の授業のチャイムが鳴ると、教室は一気に騒がしくなる。部活に行く生徒や、帰りに寄り道しようと楽しそうに話す生徒を横目で見ながら、那月はノートを閉じた。  昼休みの後の授業にはあまり集中できず、最後の授業は何度も時計を確認していた。理央に誘われたのが嬉しくてその場で家に行く約束をしてしまったが、そもそも理央とは今日初めて会話をしたばかりなので緊張してしまう。  クラスから人が減っていくのを眺めながら理央を待つ。時間の流れが遅く感じて、本当に迎えに来てくれるのか心配になっていたが、しばらく待っていると、約束通りに理央は教室に迎えに来た。  理央はドアから教室を覗き込み、那月を見つけると手招きをした。それを見て那月はすぐに理央のもとに駆け寄った。 「もう帰れる?」  静かな声で理央が聞いてくるので、これから理央の家に行くことが二人だけの秘密のように思えた。 「帰れるよ」 「ん」  それだけの言葉を交わして、二人で並んで歩き出す。並ぶと理央の方が背が高いのだとわかる。これから家に行くというのに、理央のことはよく知らない。不良だと言われているが、公園にいた不良たちとは違うと感じていた。
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