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理央の家は学校から遠くないため徒歩通学だという。那月は電車通学なのでいつも学校と駅の往復だが、今日は初めて通る道に新鮮な気持ちになった。意外と学校周辺の道は詳しく知らないのだ。
「お腹大丈夫なのか? 勇太に蹴られただろ」
「もう大丈夫だよ」
体を気遣ってくれる理央に那月はそう言ったが、本当は今でも思い出すと少し怖かった。痛みは数日続き、殴られた頬よりも蹴られた腹の方が痛かった気がする。もう二度とあんな目に遭いたくないと心の底から思う。
あの後、警察によって何名かは捕まったが、ほとんどが逃げてしまったという。勇太もいつの間にかいなくなっていたようだ。那月はいまだに理央と彼らの関係がわからないでいた。
「あの人たちは友達?」
「友達というか、ちょっとした知り合い。中学が一緒だったんだ」
「勇太くんって子も?」
「そう。勇太とは一緒にバスケ部に入ってたんだ。昔は仲良かったから」
そう言った理央の表情は少し寂しそうに見えた。那月は二人の間に何があったのか聞いてもいいのか迷ったが、理央の方からポツリと語り出した。
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