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◇
理央の家は平屋で、ブロック塀に囲まれた小さな庭が付いている。隣にも同じ形の家がいくつか並んでいた。
「お邪魔します」
友達の家に遊びに来るのは久しぶりで、那月は自分の家との違いに興味津々だった。
廊下を進んだ先にある居間は中央にローテーブルが置いてあり、すぐ隣に台所がある。窓からは陽の光が差し込み居心地がよさそうだ。
「狭いけど座って。お茶飲む?」
「うん。ありがとう」
那月が座布団に座ると、ちょうど目線の先にアキがいた。警戒しているのかテレビ台の横で動かずじっとこちらを見ている。あの日、公園で痛々しいほどに弱っていたアキはすっかり元気になっていた。
テーブルにグラスとペットボトルを置いた理央は、アキを抱っこすると那月の膝の上に乗せた。アキの温もりと重さは那月は安心させる。撫でるとさらさらとした毛並みが気持ち良くて何度も撫でた。
那月の隣に腰を下ろした理央が手を伸ばすと、アキは理央の手に顔を擦り付けた。
「あの日、夜になってもアキが帰ってこなくて、心配してたらあいつらから電話が来てめちゃくちゃ焦ったんだ」
「無事で本当によかったね」
「本当に。もうアキを外に出すのやめようと思うんだ。また勇太たちに捕まっても嫌だし。だからいっぱい遊んでやってよ。顎の下とか撫でると喜ぶよ」
言われた通りに顎の下を撫でると、アキは目を細めて上を向いた。
「かわいい」
自然と頬が緩む。ペットを飼っていない那月は猫が家にいたら楽しいだろうと思った。
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