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「おかえり。お客さんだよ」
理央がそう言うと、弟は頭をぺこりと下げた。
「初めまして。玲央です」
「佐野那月です」
「那月がアキのこと守ってくれたんだよ」
理央がそう言うと、玲央の表情がパッと明るくなった。
「そうだったんだ! お兄ちゃん、お菓子出した?」
「今から出すから。お前は手洗ってこい」
玲央が洗面所に向かうと、理央は台所の棚からお菓子を出し始めた。
「あいつすごい甘えん坊なんだよ。那月にもベタベタするかも」
理央は少し困ったような顔でそう言った。
玲央は理央の言った通り甘えん坊で、お菓子を食べる時も自分のことを話す時も、那月にくっついてきた。那月は小さい頃の自分を見ているようで、つい玲央を甘やかしてしまう。
兄弟のいない那月は年下と接する機会がほとんどない。懐かれるのは嬉しいもので、自分にも弟がいたらこんなに楽しいのだろうかと想像する。
玲央はしゃべるのが好きで、話題は尽きることがなく次から次へと続く。
「僕、バスケ部入りたいのにお兄ちゃんがやめろって言うんだ。酷いよね、自分はバスケ部だったのに。知ってる? バスケしてるお兄ちゃんすごくかっこいいんだよ。この前もね……」
「玲央、もういいから。ほら、アキがお前のジャージ噛んでるぞ」
「アキ! だめだよ!」
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