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「猫を虐待するのは犯罪ですよ」
那月が繰り返し声をかけると、引き下がらないことに嫌気がさしたのか、不良の一人が声を上げた。
「勇太、何とかしろよ」
その言葉に応じて、少し離れた場所にいた男子が那月の目の前に立ちはだかった。
他の不良たちはわかりやすく派手な格好をしているが、勇太と呼ばれたその彼は違った。きれいに整えられた黒髪に、着崩すことなく制服のネクタイを締めている。見た目で彼を不良だと思う者はいないだろう。確かこの制服は有名な男子校のものではなかっただろうかと那月が思い出していると、勇太は不機嫌そうな声を出した。
「お前に関係ねえだろ」
勇太は那月を見下ろしてそう言った。それでも那月は毅然とした態度を崩さず、言い返そうとした。
「猫を……」
しかし、続けようとした那月の言葉は、勇太に胸ぐらを掴まれたことで遮られた。那月は突然のことに首が締まって声が出せなくなり、押し返して抵抗したが力は敵わなかった。
「うるせえな」
勇太はそう言って那月を投げ飛ばした。
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