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走ってきた理央は息を切らしながら、勇太の足元にいる那月に気づいて目を見開いた。
「勇太お前、何してんだよ。関係ない奴にまで……」
「勘違いすんなよ。こいつが勝手に絡んできたんだ」
二人はそのまま睨み合って動かず、那月は息が詰まりそうになった。
「お前の猫はここだよ」
不良の一人が乱暴に猫を抱き上げて理央を挑発した。猫は力なくうなだれ、鳴く体力もないように見えた。
「返せよ」
そう言った理央の怒りは今にも爆発しそうだ。
「やっぱりこの猫、理央のだったんだな」
不良はそう言って勇太に猫を手渡すと、猫の目の前でライターに火をつけた。
「お前!」
理央が飛びかかろうとすると、不良たちは数人で理央を押さえつけようとした。しかし理央はすぐに暴れて不良たちを振り払った。それを見て、他の不良たちも理央に群がる。
勇太は猫を抱いたまま、その様子をつまらなそうに眺めていた。那月も目の前の乱闘に気を取られていたが、勇太と二人で残されたことに気づき、猫を解放しようと勇太の脚を掴んだ。
「猫を放せ!」
那月の声に勇太は静かに足元を見下ろすと、掴まれた足を蹴り上げて那月の手を振り払った。そして、そのまま那月の腹に蹴りを入れた。衝撃と痛みに那月は倒れ込み、息ができなくなってパニックになった。血の気が引いていき、力が入らない。
「勇太!」
理央の怒鳴り声を聞きながら那月の視界は暗くなっていった。
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