1 春の夜の公園にて

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  ◇  目を覚ますと那月はベッドに寝ていた。蛍光灯の光が眩しくて目を上手く開けられない。 「那月、気がついた?」  声がする方を見ると、そこには従兄弟の伊月(いつき)がいた。伊月は那月と少し歳が離れているが、昔から面倒を見てくれている兄のような存在だ。那月が高校生になった今でもよく世話になっている。  伊月の顔を見て、那月はほっと息を吐いた。 「お兄ちゃん……」 「もう大丈夫だよ」  声を聞いて安心したのか、伊月はそう言って那月の頭を撫でた。  ここは病院だと気づき、なぜ自分がここにいるのかだんだんと思い出してきた那月は、猫と理央のことが気になった。 「猫は? 横山くんもどうなったの?」 「猫は保護されたよ。横山くんってのは?」 「俺と同じ高校の……」 「ああ、あの子も手当てされてたよ。友達?」 「いや、そうじゃないんだけど……」  理央とは友達ではない。自分が一方的に知っているだけだ。今日だってたまたま居合わせただけで言葉も交わしていない。  思い返せば、理央の登場はヒーローのようだった。それに対して自分は猫を助けられず、助けを待つだけの情けない姿を見られてしまい恥ずかしく思う。  あの後のことは覚えていない。警察が来たはずだが、不良たちはどうなったのだろう。那月は公園での出来事を思い出そうとしたが、意識がはっきりしてくると殴られた頬が再び痛み出した。 「痛い?」  顔を歪める那月を見て、伊月が心配そうな顔をして聞いてきた。 「ちょっと痛い。……まだ帰れない?」 「もう帰ろうか。看護師さん呼んでくるから、少し待っててね」 「うん」  伊月が席を立ち、那月は一人で残される。寝返りを打とうとしたら、蹴られた腹が痛んで涙がこぼれた。
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