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もう帰ろうかな、と思い始めた頃だった。
「トーヤ、あのスーツのおっさん、追いかけて」
「え?」
ナツが指を刺す先に、明らかに挙動不審のヨレたスーツのおっさんがいた。かわいそうに、頭はちょっと寒々した感じのおっさんで、大きな鞄を抱えて路地へ入っていく。
「任せた!あとでご褒美イラマしてやるからな!」
「はあ!?」
と、伸ばした手も空く、ナツは人混みに紛れてしまう。ついでに、大きなウサギのぬいぐるみを押し付けられた。
全く、とため息を吐き出して、俺は言われた通りスーツのおっさんを追いかけた。
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