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「お前ほんと神出鬼没だよな…」
パチ屋から出た俺とナツは、冷たい風の中を並んで歩く。
時々ふわりと揺れる赤い髪と、その下に見える小さな横顔は、まさかコイツが殺人鬼だなんて誰も思わないだろうな、と思った。
そういや一度殺人鬼と言ったら、笑顔でナイフを向けてきた。殺人鬼は快楽殺人だけど、殺し屋は仕事だから一緒にするなということだった。
俺からすればどっちも同じだ。
「最近忙しくて。寂しかった?」
「いや全く」
「まあいいや」
鼻歌でも歌い出しそうな雰囲気で、俺の手を握るナツが、まあ、正直可愛くないわけでもない。
「どこいくんだ?」
「ゲーセン」
と言って、指を刺す先は、駅前の賑やかさの中に建つ商業ビルだった。一階には確かにゲーセンがある。
イマイチ何を考えているのかわからないが、そもそも殺し屋の考えることなんて俺には想像もつかない。
平日の真昼間だから当然と言えば当然だけど、そのゲーセンにはあまり人がいなかった。
小さな子どもを連れた女性が何組かいる。あと、学校をサボっているのか、明らかに若い男女のグループがいた。
「トーヤ、オレあのウサギのぬいぐるみが欲しい」
ナツが無邪気に指を刺す先には、淡いピンクのデカいウサギがいた。
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