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奇しくもその可愛らしいフォルムのフワフワのウサギは、ナツが抱きしめているのを想像すると可愛らしい。
ただ、男二人であのウサギを取るには、相当な勇気が必要だと思った。
「お願い、トーヤ」
俺の腕にひしっとしがみつき、上目遣いで言ってくるナツ。
クッソ…さっきスロで大勝ちしたのが仇になった。
「わかったよ…」
「やったぁ!!」
こうなればもうヤケだ。両替機でバカみたいに100円玉を出して、俺はそのウサギに立ち向かった。
そのウサギは、どうやら今月すでに10匹以上が狭い箱から救出されているらしい。そんなことが書いた紙が貼ってあった。今日は11月10日だから、一日一匹は外の世界へ旅立っている。
とか考えてみても、それが難易度的にどれくらいのレベルに当たるのかなんて、俺にはわからないけど。
「トーヤ頑張って!」
「うるさいよ…」
日々生きることに活力のない俺は、ナツの応援の声が結構嬉しかったりもする。言わないけど。
それからは夢中だった。
一体いくら注ぎ込んだのかはわからない。あと、サボり学生グループが、遠巻きに俺を見て笑っていることはわかった。
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