休日

4/22
92人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
 奇しくもその可愛らしいフォルムのフワフワのウサギは、ナツが抱きしめているのを想像すると可愛らしい。  ただ、男二人であのウサギを取るには、相当な勇気が必要だと思った。 「お願い、トーヤ」  俺の腕にひしっとしがみつき、上目遣いで言ってくるナツ。  クッソ…さっきスロで大勝ちしたのが仇になった。 「わかったよ…」 「やったぁ!!」  こうなればもうヤケだ。両替機でバカみたいに100円玉を出して、俺はそのウサギに立ち向かった。  そのウサギは、どうやら今月すでに10匹以上が狭い箱から救出されているらしい。そんなことが書いた紙が貼ってあった。今日は11月10日だから、一日一匹は外の世界へ旅立っている。  とか考えてみても、それが難易度的にどれくらいのレベルに当たるのかなんて、俺にはわからないけど。 「トーヤ頑張って!」 「うるさいよ…」  日々生きることに活力のない俺は、ナツの応援の声が結構嬉しかったりもする。言わないけど。  それからは夢中だった。  一体いくら注ぎ込んだのかはわからない。あと、サボり学生グループが、遠巻きに俺を見て笑っていることはわかった。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!