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ナツが向かったカフェは、商業ビルから四車線の道路を挟んだ向こう側にあった。
落ち着いた内装に、どこか懐かしさを感じる店内は、コーヒーのいい香りで充満している。
ナツはそこで王道のオムライスを注文し、俺は適当に和風のパスタを頼んだ。
二人して顔を突き合わせて食事していると、なんだか本当にデートしているような気分で、少し照れ臭い。
家にナツが押しかけてきた時には、適当に作った料理を振る舞ったりもしているが、外でとなるとなんだか不思議と緊張してしまう。
「オムライスって、血が吹き出したみたいでいいよな」
「おいコラやめろ。食事中だ」
「なんでさ?ほら、このケチャップとか最高じゃん」
「お前の話聞いてるとメシが不味くなるわ……」
俺には殺し屋の感性なんてない。本気で黙れよと思う。
しばらく黙々と食事をして、腹が満たされると途端に眠気が襲ってくる。普段から規則正しくない生活をしているから余計だ。
「トーヤは、家族いないの?」
唐突な問いだ。ニィッとされて、俺は逆に顔を顰めた。
「いない。中学の頃に二人とも死んだ」
「へぇ」
聞いといてなんだよ、と思った。
「オレもいない。同じだな」
「あっそ」
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