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俺たちは、過去の感傷を分かち合うような間柄じゃない。だからそれ以上の会話はない。
何か意図があったのかもしれないが、特に興味もない。
大体殺し屋やってるような奴が、普通の家庭に生まれ育ったという方が信じられないくらいだ。
食後の温かいコーヒーを飲み、しばらくしてまたナツが突然言った。
「んじゃあ、食後の散歩でもしますか」
「はあ?」
「摂取したカロリー分は消費しないと」
さっと席を立って行ってしまう。
俺は慌てて伝票を持って会計へ急ぐ。ナツは俺を待たずに外へ出て行った。
なんて勝手な奴なんだとイラッとしたが、殺し屋なんてそんなもんだと自分に言い聞かせ、急いで後を追った。
外に出てナツの艶のある赤い髪を探す。人通りの少ない通りで、その赤毛はとてもよく目立つ。
駆け足で追いつくことができた。
「おい!人に奢らせておいてなんだよ!?」
「ゴチソウサマデース」
「もうちょっと心込めろよ!」
と言うも、ナツは素知らぬ顔で歩き続ける。なんなんだよコイツ、と思い始めた。
急にデートだとかなんとか言い出して、どれだけ自分勝手なんだよ。
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