休日

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★  おっさんは、狭い路地を転がったゴミ袋やら空き瓶やらを避けながら奥へと入っていく。  どう考えても犯罪者だ。大事そうに抱えたカバンが怪しすぎる。  途中丁字になった突き当たりを左に曲がるのが見えて、俺は角で一旦立ち止まった。  話し声がした。 「ちゃんと持ってきたか?」 「は、はい…」 「まさかつけられてねぇだろうな?」 「だ、大丈夫だとおといます…」  ギクっとした。まさに、自分が今、後を追ってきたわけだ。 「それを早く渡せ」 「あの、約束はちゃんと守ってもらえるんでしょうか…?」 「うるせぇ!!さっさと渡せ!」  ヒィッとおっさんのかわいそうな悲鳴が聞こえた。  これはもしかして、俺は大変な現場に居合わせてしまったんじゃなかろうか?  ナツのクソ野郎!!  デートとか言って、変なことに巻き込みやがって!! 「中身問題ないな…んじゃ、おっさん、アンタ用済みだ」 「えっ、話が違うじゃ、」 「うるせぇよ!!」  ドスッと鈍い音と、苦しげな呻き声がした。何が起こっているのか、容易に想像がついた。  俺はナツのような人間離れした能力は持ち合わせていない。それに、人助けを進んでするような善人でもない。ただの平凡な人間だ。
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