赤い髪の死神

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★  ナツとの出会いは突然だった。 「ってめ、ここは金のねぇ奴が来るとこじゃねぇんだよ!!」  ガシャーンと散らばる、白とベージュの牌。殴られた頬の痛みに呻き声を上げながら、手をついた床を見る。霞む視線の先に、誰かが吐いた跡がいくつも見えた。汚ねぇ。そんなところに手をついている俺も汚ねぇ。  でも、俺なんか汚ねぇ人間のひとりなんだから、これくらいどうって事ない。 「二度とくんじゃねぇぞ!!」  別の声がそう言って、俺をズルズルと引き摺って外へ放り出した。汚い古い雑居ビルの廊下の壁に、したたかに背中を打ち付ける。  はぁ。  俺何やってんだろ。  賭けマンなんてヤクザばっかじゃん。ロクに金もない初心者が入って、身体が無事なだけマシか。いや、もう、なんでこんなことしてんだろ。  俺、楢橋冬夜(ならさきとうや)(24)は、わかりやすくヤサグレている。  定職に就かず、高卒でフリーター。将来の展望も未来への希望もない、ダメ人間を絵に描いたような人生。  なんとなく入った雀荘でも相手にされないようなクソだ。  名前の通り、俺の人生は暗く冷たい冬の夜のようだ。 「クソッ」  何度となく毒付きながら、仕方なく帰り着いた自宅アパートの、すぐ近くのゴミ捨て場を通った時だった。  四角いコンクリートの枠の中、飛び出した裸足の足が見えた。
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