赤い髪の死神

5/9
前へ
/63ページ
次へ
 俺は目を疑った。  季節は10月中旬。そろそろ夜間の外出は寒い。それなのに、裸足で、しかもゴミ捨て場に倒れているとは何事か?  恐る恐る近寄ってみる。  まず最初に、鮮やかな赤い髪が目に飛び込んできた。次に、血に染まった白いシャツ。黒いモッズコートを着ているが、全体的にボロボロだ。  さらに近付いて見ると、胸が上下しているから死体ではないことがわかる。  そのまま捨て置くこともできた。でも、良心をチクリと刺す罪悪感を覚える。このままここに放置されていると、翌朝死体になっている…なんてことがあるかもしれない。時刻はもうすぐ日付をまたぐ。朝まで誰も通らないことも考えられる。  少し悩んだ。悩んで、俺は仕方なくその人を家に連れて帰った。  部屋に入って、とりあえずその人をひとつしかないベッドに寝かせた。よく見ると結構幼い顔をしていて、頬の擦り傷さえなければモテるだろうなと思った。  とりあえず汚れた衣服をどうにかしよう。あと、手当てもしなくては。ハラリとめくれたシャツの下に、浅いけど酷い切り傷がいくつもあった。  汚れた黒いモッズコートを脱がせる。  ゴトリと硬いものが床に落ちた。  真っ赤な血に濡れた、刃渡り三十センチほどあるダガーナイフだった。  どうやって隠し持ってた!?  いや、今はそれどころじゃない。  幸いにも消毒液やガーゼなんかは揃っていて、血のついたシャツを脱がし、傷の手当てをした。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

94人が本棚に入れています
本棚に追加