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俺は目を疑った。
季節は10月中旬。そろそろ夜間の外出は寒い。それなのに、裸足で、しかもゴミ捨て場に倒れているとは何事か?
恐る恐る近寄ってみる。
まず最初に、鮮やかな赤い髪が目に飛び込んできた。次に、血に染まった白いシャツ。黒いモッズコートを着ているが、全体的にボロボロだ。
さらに近付いて見ると、胸が上下しているから死体ではないことがわかる。
そのまま捨て置くこともできた。でも、良心をチクリと刺す罪悪感を覚える。このままここに放置されていると、翌朝死体になっている…なんてことがあるかもしれない。時刻はもうすぐ日付をまたぐ。朝まで誰も通らないことも考えられる。
少し悩んだ。悩んで、俺は仕方なくその人を家に連れて帰った。
部屋に入って、とりあえずその人をひとつしかないベッドに寝かせた。よく見ると結構幼い顔をしていて、頬の擦り傷さえなければモテるだろうなと思った。
とりあえず汚れた衣服をどうにかしよう。あと、手当てもしなくては。ハラリとめくれたシャツの下に、浅いけど酷い切り傷がいくつもあった。
汚れた黒いモッズコートを脱がせる。
ゴトリと硬いものが床に落ちた。
真っ赤な血に濡れた、刃渡り三十センチほどあるダガーナイフだった。
どうやって隠し持ってた!?
いや、今はそれどころじゃない。
幸いにも消毒液やガーゼなんかは揃っていて、血のついたシャツを脱がし、傷の手当てをした。
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