赤い髪の死神

6/9
前へ
/63ページ
次へ
 一通り目につく傷にガーゼを当て、ふうっと一息ついた。  冷静になると、もしかして自分はとんでもない犯罪に手を貸したんじゃないかと思えてくる。被害者だと思って助けたつもりだけど、床に座る俺の横には、明らかに誰かを傷付けたであろうナイフが転がっているわけで。  これ、隠したら俺も犯罪幇助とかになる? 「ん…」  悩んでいると、赤髪の男が小さく苦しげな吐息を漏らした。  長いまつ毛が震えている。傷が痛むのだろうけど、これ以上どうしようもない。  そっと手を伸ばして、鮮血のような赤い髪を撫でる。なんでそんなことをしたのかもわからない。完全に無意識だった。柔らかくて艶のある長めの髪。襟足だけやけに長めで、ひと昔前に流行った髪型だな、と思った。  瞬間、手首をものすごい力で捻り上げられ、何がどうなったのか、フローリングの硬い床にうつ伏せで投げ出された。 「イッ、たぁ…!」  顎を強かに打ち付け、思わず涙が出る。後ろ手に回された腕がミシミシと嫌な音を立て、空いた方の手で床をタップしてギブアップを主張してみた。 「ちょ、痛い痛い痛い痛い!!」 「弱……」  クスリと笑う声が後頭部に降ってきた。 「ここどこだ?」 「俺の!家!ってか離せよ!?」  パッと解放される腕。とりあえず助かった。 「助けてくれたのか?」 「まあ、そうだけど」
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

94人が本棚に入れています
本棚に追加