赤い髪の死神

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「もっ、イきそ、あああっ、奥に出してっ!」 「わかった、んっ」  懇願されるままに、さらに激しく腰を打ち付ける。  今まで女としかしたことはなかった。  でも、俺はこの時悟った。これ以上の相手はいないかもしれない。  相性がいいとかだけじゃない。  俺はこの人の、妖しくも美しい雰囲気に惹かれた。 「イッ、ああああっ…はぁ、はぁ…」  ぐったりと倒れる男を抱きしめる。  男特有の骨格の硬さを感じた。それと同時に、俺とは違う線の細さと、包み込んでしまえるほどのか弱さのようなものを実感した。 「あの…ごめん、俺…」  咄嗟に謝った。好き勝手にしてしまったと思ったからだ。 「ハハッ!別にいいよ。もともとオレが誘ったからな…お前、名前は?」 「楢崎、冬夜…」 「トーヤ」  俺の名前を呼ぶ声に、腰が震えた気がした。 「オレはナツ。『死神』と呼ばれてる……殺し屋なんだ」  そう言ってナツはニヤリと笑った。冗談だろ?と突っ込んで欲しかったのかもしれない。  でも俺は知ってる。  この世は残酷で、普通の人が知らないところで、裏側を支配する人間がいて、俺たちはただ生かされている存在に過ぎないことを知っている。  俺の目の前に現れた、妖しくも美しい赤毛の死神は、俺が過去を忘れないようにとやってきたのだと思った。
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