92人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
「もっ、イきそ、あああっ、奥に出してっ!」
「わかった、んっ」
懇願されるままに、さらに激しく腰を打ち付ける。
今まで女としかしたことはなかった。
でも、俺はこの時悟った。これ以上の相手はいないかもしれない。
相性がいいとかだけじゃない。
俺はこの人の、妖しくも美しい雰囲気に惹かれた。
「イッ、ああああっ…はぁ、はぁ…」
ぐったりと倒れる男を抱きしめる。
男特有の骨格の硬さを感じた。それと同時に、俺とは違う線の細さと、包み込んでしまえるほどのか弱さのようなものを実感した。
「あの…ごめん、俺…」
咄嗟に謝った。好き勝手にしてしまったと思ったからだ。
「ハハッ!別にいいよ。もともとオレが誘ったからな…お前、名前は?」
「楢崎、冬夜…」
「トーヤ」
俺の名前を呼ぶ声に、腰が震えた気がした。
「オレはナツ。『死神』と呼ばれてる……殺し屋なんだ」
そう言ってナツはニヤリと笑った。冗談だろ?と突っ込んで欲しかったのかもしれない。
でも俺は知ってる。
この世は残酷で、普通の人が知らないところで、裏側を支配する人間がいて、俺たちはただ生かされている存在に過ぎないことを知っている。
俺の目の前に現れた、妖しくも美しい赤毛の死神は、俺が過去を忘れないようにとやってきたのだと思った。
最初のコメントを投稿しよう!