気づいたのは

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 ビルの最上階には、懐かしの勇者ジョナサンがそのまま移築されていた。 「よ、よかったあああああああ!俺の店がここに!好きなだけ飲み食いしてください!」 「ホストクラブに通うより、こっちの方がいいだろう。ああマコマコ凄く可愛いなあ!トキ、ちょっと離れてろ。俺はこれからマコマコのフニュっとした真理の奥に肉薄しようと思う」  シズヤとマサオはとっくに帰っていて、店はゴーマのエロパワーに満ちようとしていた。  ライルは多分、人妻と意気揚々とどこかに消えていったが、何人かのお父さんは怒髪天を衝いて間男を追っていったからどうなるか解りそうなものだった。 「まあいいじゃないダーリン。今は勝利を喜びなさい。ってフランチェスカは早速仙桃酒飲んでご機嫌になりつつあるし」  楽しそうにマコトさんと酒を酌み交わしている妻の姿を見た。  そう言えば、フラさんユリアスに犯されそうになってたし、アトレイユにもレイプして殺すっていわれてたんだよな。  本人全然意識してないけど、まあ、あのおっぱいは凄い惹き付けられるんだよな。  そう言えばミラージュもそうだよな。  アトレイユとロクサーヌの息子が出てくるとは驚きだったが、流石にあれだけのことを仕出かすとは思えないが。  ジョナサンの思考を汲み取るように、ミラージュはジョナサンにしがみついた。 「ジュニアと呼ばれたあいつには幾つかの人格があるわ。だから大佐とロックスは記憶を共有していたけど、私達の知悉している、あらゆるコードとは無関係な邪悪がそこにいる。もし、ジュニアという人格すらその一部だとしたら、私達は把握しなきゃならない。あの男の邪悪さの本分を」  ああ。そうだな。  ゴーマはとっくにマコトさんのおっぱいしか見てない。  ゴーマなら、もしかしたら。 「それよりも、ダーリン。移動しましょ。ゴーマのおっさんが言ってたでしょ?二階下は賃貸になってるって。借りといたのよ。ダーリン、子供」  いや、それは構わないが。  ジョナサンは、アルテミシアとペンテシレアと屋上の景色を見ていたジョエルを呼んだ。 「ジョエル。ジョエル!」 「は?はい!何ですか?王様」 「大変になっちまったなお前も!アルテミシア!」 「何でしょうかマスター」 「ジョエルの側にいてやってくれ。多分、今回の事件の主役はジョエルだ。ペンテシレアの面倒は見る。お前がいればジョエルは安全だ」  ジョエルはポカンとしていた。  自覚はあるまい。恐らく、ジュニアがもっとも殺したかったのはジョエルだったはずで。  ミラージュが随分先走ったのは確かだ。  通常の人類では到底届かないかなりの情報は、既に看破されていたのだった。  会うべきではなかった。普通は、彼女にしか解るまい。アトレイユとロクサーヌの両方の顔を見ていたとは誰も思うまい。  今はただ一人を殺した殺人者でしかない。  セントラルでは手配はされるだろうが、国を挙げての大捜査網とまではいくまい。  アカデミーでもそうだ。あまり大々的には追えない。  だが、ジョエルとアルテミシアなら、きっと。  平和な勇者は静かに台頭を始めた。  その活動が、どこまでスケールを広げていくのかは、 まだ誰にも解らなかった。  そして、広いセントラルの一角に立ち、そいつは朝の光に目を細めた。  女王は厄介な女だ。あれには近づくべきではない。  国王はボンクラに見えるが、過小評価は出来ない。  あれが、この世界を全く変えてしまったのだから。  これからどうしようか。とりあえず、俺の秘密を知っていそうな女は殺した。  あの女にとって俺は息子だが、俺にとっては邪魔物でしかない。  俺の秘密は守らなければ。ならばあと二人。  一人は月に、もう一人はアカデミーにいる。  幸い協力者はいる。まずは身を寄せるか。  奴等は俺をアトレイユジュニアと思っているようだが、そいつですら俺を構成する一要素でしかない。  名前を秘された多重人格者は、過去のしがらみと化した軍帽を脱ぎ捨て、上着を放り捨てた。  軍帽はくるくるとセントラルの道を舞い、上着は朝の風を孕み、彼の姿を覆い隠した。  上着が路傍の石畳を覆った時、そこには誰もいなかった。 了
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