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困っちゃった王様
馬鹿じゃないの?
愛人である中央国家セントラルの女王、ミラージュ・デラ・ウィンシュタット・エルネストは、対面に座ったジョナサンの首に手を回して言った。
「そうは言ってもな。困ってるんだけど。俺」
「イルゼ・リヒテンシュタインでしょ?あんたとかタルカスの奴の世代の人間じゃんか。自分で何とかして」
ジョナサンは、思わずモゾモゾしていた。
ミラージュは公服のロングドレスを着ていた。
正直に言うよ。ロングスカート履いた全員としていた。
アリエールにエメルダ、イゾルテにユノ、フランチェスカと全員のニャンニャンちゃんを。スカート履いたままで。
ミラージュの細い喘ぎが耳を擽った。
「ああうん。ちょ、ちょっと待てミラージュ。今俺に迫った危機の話をだな。ああ♡ミラージュ暖かい♡一回出しちゃっていい?ああ♡ミラージュ♡」
こんな時でも、女王はアカデミー国王との情事を忘れていなかった。
この後公務が分刻みであったとしても。
「イルゼなんか簡単じゃんか。私が何かするまでもなく。ああ自分で何とかしなさい。私は知らない。今ミラルカの習い事で忙しいのよ」
話題が二人の間に出来た双子にスライドしていた。
「ミラルカはもっと伸び伸びと育てた方が」
はあ?ミラージュは眉を歪めて言った。
こんなおっかない顔していても、ミラージュは可愛い愛人に違いはなく、早くもジョナワンのワンちゃんは反応していた。
「とりあえずね。ん♡もう一人欲しいんだけど」
ミラージュが妊娠する前にイルゼがそうなるだろう。
それは凄く不味い。向こうは産む気満々で。
「あ。今イルゼのこと考えてたでしょ?残念だけど、今のあんたはただのボンクラ犬よ。昔とは違う。今のあんたはちょうど回り回ってブロンズに戻ってる。しかも王様のままで。最下層国王の愛人にされそうだって国民は怯えてるのよね。実際フランチェスカがポコポコ産んじゃうから」
それについちゃあお前等も一緒だろうに。
「まあ、あんたはボンクラ犬のままの方がいいのよ。ゴーマのおっさんと遊んでるくらいがちょうどいいのよ。あんたが輝くのは、周囲にどうしょうもない危機が迫った時だけよ。平和の為に、あんたは犬っころとして生きて死ぬ方がいいのよ。安心して、子供達に囲まれる生活をあげるから。ボンクラワンちゃん」
ムカ。だが、言われてみると、不特定多数にモテるより、大事な女達と心を通わす方がいい。
「ちょっと犬犬うるさいが、まあ結局お前も結構可愛いハスキー犬だったしーーう?」
恐ろしいプレッシャーがあった。
「今何つった?このボンクラ犬っころが。あの件は喋るなっつったでしょ?」
い、いや。未だにこいつ等この前のレロレロ事件を忘れてないらしかった。
リアルメス犬化したくらいでそこまで怒るの?
「って、うおい!黒い蛇が!普通なら死んじゃう奴だぞこれ!」
「噛まれたって死なないじゃんダーリン。自力でオニキスバイパーの毒に耐性つける人間は二人しか知らないわよ。時代が時代とはいえ狂気の沙汰よ。私が見つけたのだって大変だったのよ。フェルナンド・フェリーチェに生息地聞いて、王宮騎士引き連れて爬虫類ハントしたのよ。危うく噛まれかけたわ。今じゃこんなにいっぱい」
繁殖させたオニキスバイパーがいっぱいいた。
「大変だったんだから。ユリアスが毒で死んでダーリンが犯人だってすぐ解った。アリエールが痴漢されたりシャワー覗かれてる間に、私はダーリンの手口の分析をしてたのよ。お父様を公爵から守りながらね」
あー。あの時か。ミラージュが休んでたんだよな。こいつ学校サボってこんなことを。
「ところで、なあ、オニキスバイパーが、うおい!何でこの蛇俺の尻に向かってんの?!ズボンの中に入ってくんあああああ!」
「この前のないない騒動は忘れてないわよ?みんなでダーリンを念仏講にしようと準備して待ってたのよ?上手く逃げたわね。発起人のフランチェスカが気絶しちゃって立ち消えになってたのよ」
ゴーマに幽閉されてよかったよ。っていうか念仏講って。知ってるのお前等だけだぞ。
「このまま蛇に尻をあれされて堪るか!どっちが先にギブアップするか勝負だ!ほれほれ!どうだ参ったか!」
急に腰の動きを早めた。
「ちょ、あん♡激しすぎだって。ちょ♡お座り!あ♡あ♡あ♡」
「ほーら。蛇を消せよお前。あ痛!噛んだな?!悪い女王にはお仕置きだ!」
噛まれたら30秒で死ぬ、世界最強の毒蛇に噛まれたのにこの有り様だった。
暗殺者としての才能に気づき、以後生物毒の活用法を学び続けた男は今、平和な幸福に浸っていたのだった。
本当に美しく育った愛人の目は潤み、やがて甘い悲鳴が響き、ミラージュの下腹部がキュンと締まったのを感じた。
この後、結局何一つ解決しないまま、ミラルカとウィルの双子の相手をして1日が終わってしまった。
このままではモンテネグロにされてしまう。
一晩中懊悩した後、ジョナサンはこっそり敵情視察をすることにしたのだった。
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