ホストになっちゃった王様

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ホストになっちゃった王様

 商業区に大きな花火が上がっていた。  今日は学園国家アカデミーの建国記念日であり、商業区の生業が開始された日でもあった。  つまり、ジョエルの勇者ジョナサン出店の初日でもあった。  商業区でも大規模な祭日が催され、多種多様な衣装を着た娘達は楽しそうに街を練り歩いていた。  さて、始まるのだ。勇者ジョナサンとブラック・インペリアルの売り上げ対決が。  流石にジョナサンはホストをやったことはなかった。  アカデミーに通っていた時に幾つかやったバイトは精々バーテンまでだった。  ホストとしての基本的なノウハウは、ジョエルに学んでいたのだが、  ゴーマ(こいつ)がいれば全部滅茶苦茶になるんだろうな。 「よし。夜8時だ。開店だぞお前達。ブラック・インペリアルを完膚なきまでに打倒しろ」 「だからって何で俺がよ」  面倒臭そうに言ったのはアカデミー初等部の教員兼用務員のライル・グリフィス・コティングリーだった。  ほぼ完全なアースツーの住人になっていた。 「まあそう言うな。せっかくホストになれたんだ。ママさん世代をお前に任せる。若年層はお前等がやれ」 「子持ちですがいいんですか?先生」 「アースツー見物っつってよくもこんな目に!覚えとけよ勘解由小路!」  風間静也と銀正男はそれぞれ言った。 「大体何なんだ!こんなメンツ呼び寄せやがって!」 「女侍らしゃあいいんだろ?簡単だぜこんなの」 「そしてお前だあああああああああああ!何してんのお前?!」  薄気味悪い生き物がそこにいた。 「チェルシーちゃんにドン引きされたの忘れたのかああああああ?!」  昔にそんなことがあった。 「昔のことは覚えてねえ。見ろこのイケメン顔を」  イケメンっぷりに磨きがかかっていた。 「何でこの生き物をつれてきたんだ?!ゴーマあああああああああ!!」 「ゴーマ様は直立歩行モードでイケメン化したアルフォンス師匠を一瞥し、笑い死ぬレベルで爆笑した後雇い入れました。ちなみに源氏名がそれぞれこれです」  壁には、ハイセ・ツー、カゼワン、マサー、あとナイフォンスって成績表が貼られていた。  俺は無難にジョナワンになっていた。  どこが無難だよ。 「ちなみに俺は、ハデスのおじさんだったりする。さあいくぞ最強のホスト共」 「何がハデスのおじさんだボケえええええええええ!」  これっぽっちも勝てる気がしなかった。 「ハデスのおじさん、早速ご指名です」  アルテミシアが言った。 「ほう。ハデスのおじさんをご指名とは解っているな。ああいた。いらっしゃいませ、お客さーー」  ハデスのおじさんは客に挨拶しようとして固まった。 「アースツーから来ました。蛇にゃーと言います♡まあしゅてきなスーツ姿♡マコマコはもう汗をかいていましゅ♡」  空々しく客として来たアースワンの議員の奥さんは、物凄いダイナマイトボディーでハデスのおじさんに会いに来た。  右目に猫の眼帯が可愛かった。 「ハデスのおじさんにご指名入りましたー」  まだ来んのか。誰だよ?  シャリンと鈴が鳴った。 「ハデスのおじさまに台覧を賜りたく、アースツーより参りました。マダム・フォックスとお呼びくださいませ」  凄い金持ちそうな狐女房がやってきた。 「マコマコはともかく、お前に教えた覚えはないんだが」 「すみません。この店で一番高い飲み物を100基ハデスのおじさまに」 「申し訳ございません。シャンパンタワーを200人分お願いいたします」  蛇にゃー女房と狐女房は、激しい火花を散らしていた。 「シャンパンタワー計300人前ありがとーございまーす!」  やけくそ気味のジョドーがお礼を言った。  超VIPルームにはハデスのおじさん以下全員がヘルプについていた。 「降魔さん降魔さん」  もう源氏名って何なの?っていうレベルだった。 「何だい?可愛すぎる俺のマコマコ?シャンパンお代わり。いい?マコマコ」  シャンパンタワーはみんなが飲むのがお約束で、既にシャンパン飲みすぎたジョドーとジョンナムは轟沈していた。  既に300基あったし。これだけで3億ループはした。ジョエルの弱腰な価格設定では、1番高いタワーが100万だった。  最早ヘルパーはただゴーマが注文させたシャンパンを飲むのが仕事になっていた。 「勿論ですカッコいい降魔さん♡シャンパンは仙桃酒ですね?ボールでいただいてよろしいでしょうか?ところでーー」  ボールでイッキ飲みしたマコトさんは言った。 「貴女は何をしていますか?トキさん」  天狐モードになっていたトキさんは、ゴーマにすり寄っていた。 「それは誰でしょうか?稲荷山トキ殿はグループの創設者にして、今は次期総帥の莉里様の相談役をしておられます。トキ殿はホストクラブなどといういかがわしい場所にいらっしゃる訳がございません。あら?まあ坊っちゃま、(わたくし)の着物が」 「あ?ああ。おっぱいだな。マコマコおいで膝の上に」  トキさんのお色気を完全スルーしてハデスのおじさんは言った。  何だろう。客差別はホストのあるあるだが露骨すぎないか? 「行きましゅ♡ニュルン♡ああ♡降魔さんのお手々がマコマコのお腹をナデナデしていましゅ♡上着を脱いでよろしいですか?」  対面に座ったマコマコが、サマーコートを脱いで前を開帳差せた。 「うわあああああああ!何て服を着てるんだ?!マコマコ!スッケスケすぎるチャイナドレスで!おっぱい丸見えだぞ?!素晴らしい眺めで!どこのAV衣装なんだい?!」 「さあ?落とし物でしゅ♡」 「ああああ!今スーツのポケットにねじ込まれちゃったのはマコマコの素敵な紐パン!紐パン入りましたー。ざーす」  やる気のないざーすが多重に聞こえた。 「よし!行こうマコマコ。今日と明日が出会うあの部屋に。最上階は俺とマコマコがイチャイチャする為の部屋だ。じゃあな」  嫁を抱えて消えたハデスの馬鹿の姿があった。
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