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登場のプラチナブロンド
既に無茶苦茶になっていた勇者ジョナサンの騒ぎなどなかったように、ブラック・インペリアルは繁盛していた。
「また極上シャンパンタワー、誠にありがとうございます。一同敬礼!」
店には大勢の女達がいた。
彼女は、数人の護衛を店前に残し、一人店内に入っていった。
残された護衛の名前は、ジェイド・ブレイバルと言った。
ボーイの案内を無視してVIPルームに到達した彼女は、席で大佐に傅かれた、小さなプラチナ・ブロンドを見咎めて眉を上げて言った。
「あーんーたー。10才でホスト通いか。私のクリスタルカードで。はい没収」
「いい嫌あああああ!ママ!どうしてここに?!」
「父親が困ってるっていうから来たのよ。あんた面白半分にダーリンに留め刺しに来たわね。尻出せミラルカ」
「ぎゃああああああああああ!大佐助けろ!このママ犬っころを摘まみ出せええええええええええ!」
中央国家セントラルの第一王女、ミラルカ・ミラ・ウィンシュタット・エルネストは、母親を指差して叫んだ。
「セントラルのミラージュ女王でいらっしゃいますね?私は大佐でございます」
「別にあんたを指名した覚えはないわよ。ああそういうこと。彼女がいたっていう娼館がどこかだけは解らなかったのよ。そう。今解った。娼婦によってたかって殺されたラスティーノ子爵の娼館にいたのね。誰が子爵を滅多刺しにして吊るしたのか、ようやく解ったわ。あんた母親に凄い似てるわね。彼女は骨の髄までマルガレーテに毒されて、更生の余地なしとして終身刑になってる。それでイルゼに拾われたのね。名前を聞かせなさい。ロクサーヌの息子」
それは、まだジョナサンがミラージュと関係を結ぶ前のこと、ジョナサン消失事件の際、ミラージュが敵と目していたのが、レディ・パピヨンの片羽、ロクサーヌだった。
「ホストにとって源氏名は泡沫の愛の象徴。小官の誇りにかけて明かせませ」
フルオート連射の拳銃弾が、チャー大佐の回りで着弾した。
「ぎゃああああああああ!ママごめんなさい!ジェイドおおおおおおおおお!!ママに銃携帯させんなボケえええええええええええ!M93Rだぞおおおおおおおお!どこで買ったママ?!」
「んなものアメリカに決まってんでしょうが。うちの護衛官はそんじょそこらの兵装じゃないわよ。で、吐く気はないってことね?ん?って、ああ。あんた、今は、誰?」
?ミラルカは首を傾げた。
銃声に反応したイルゼが飛び込んできた。
「何よ?!何の騒ぎ?!お客様が驚いちゃう、って、女王陛下?」
「あー。出てきたわねビッチ。ダーリンにちょっかいかけずにケソケソやってればよかったのに。ちょっと話を聞かせなさい。ロクサーヌの過去を」
思わぬ方向に話が進んでいった。
ミラルカは、こっそりシャンパンを飲もうとしたが、母親に頭をひっぱたかれ、護衛官に抱えられ、退場していった。
ブーブーと言うブーイングを残していた。
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