羽衣の松の木の下で・・・

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 近くに住んでいる安心感からか、お互い連絡もしないでいたけれど、会えば血の繋がりを感じて、一気に距離が縮まり会話が弾む。お互いの家族のことも聞いて、心がオープンになった頃合いを見計らって、衣望里は本題を口にした。 「実は、おばあちゃんからさっき聞いたのだけど、美羽は翼の乙女の話を知ってる?」  衣望里は、まだ祖母に担がれているのではないかと半信半疑のまま尋ねると、意外にも美羽は、ああ、その話ねと頷いた。 「知ってるわよ。っていうか、さっき聞いたの?遅すぎない?私なんて中学校の時に母から聞いたわよ。その時は絶対に家族以外にはしゃべっちゃいけないと言われていたから、衣望里にも話さなかったけれど……」 「そんなに、早くに聞いたんだ。怖くなかった?自分に翼の乙女の血が流れていて、支配者が探しにくるかもしれないなんて、まだ信じられないし、本当なら怖い気がする」 「衣望里は相変わらず心配性ね。だから、おばあちゃんも、今まで怖がらせないように黙っていたのかもしれないわ。きっかけは、だいたい想像つくけれど、富士山がユネスコ世界文化遺産に登録された時に、三保の松原が取り上げられて目立ったからでしょ?」  衣望里が頷くと、美羽がやっぱり?当たったと陽気に笑った。 「大丈夫だって、ヴァルハラ王国の支配者がこんなところまで、来るわけな……」  衣望里の心配性をからかいながら笑っていた美羽の顔が、突然固まり表情が消えた。  何事が起きたのかと思い、衣望里が自分の背後を振り替えると、海岸沿いの砂浜を、遠くの方から明らかに日本人でない髪色の外国人が二人歩いて来る。  衣望里がまさかという表情を美羽に向けた途端、二人の頭には「逃げろ!」の文字がスパークした。
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