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安全かどうかも分からないのに、絶対に捕まるわけにはいかない!
後ろが気になって確認すると、視界が開けた海岸を歩く二人はかなり目立っているが、衣望里たちのいる場所は松林に紛れているため、まだ衣望里たちに気づいていないようだ。
「早く!早く!」
衣望里と美羽はお互いに声を掛け合いながら、肺に痛みを覚えるほどの全力で走り、海岸から十分ほどのところにあるスーパーの裏口の階段を上り、美羽のボーイフレンドの部屋に転がり込んだ。
ノックも無しにドアを勢いよく開けて、いきなり二人が飛び込んだとき、部屋の主は驚いて、椅子からパッと立ち上がって身構えたものの、誰か分かった途端に脱力した様子を見せた。
ゼーゼー、ハァハァ吐息を切らして、フローリングにへたりこんだ美羽たちに呆れ顔を向けている。
「何やってんだ美羽?友達と二人で競争でもしていたのか?」
「も、も、守哉、で、ででで出た!」
「何が?」
「ひ、人さらい」
衣望里が美羽の腕をパシッと叩き、支配者でしょと訂正する。
言ってしまってから、他人に秘密を打ち明けていいのか不安になり、衣望里は慌てて口を押えた。
上目遣いに窺うと、守也は美羽の言い間違いを笑いもしないで真剣な顔になり、床にへたりこんでいる美羽の傍にひざまずいて、間違いないのか訊いた。
「分からないけれど、直感でヤバいと思った。それで、衣望里と一緒に逃げてきたの」
「えみりさん?ああ、彼女がもう一人の翼の乙女だね。初めまして、斎藤守哉です。美羽とは父方の親戚関係にあります」
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