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ところが祖母は、今度は首を振った。
いいから慌てずにお聞き、と言われたら最後まで聞くしかない。衣望里は続きをどうぞと祖母に促した。
「保管された翼の乙女の衣は、乙女が純潔を失った時に消滅してしまうの。我が家の家系の翼の乙女たちは、結婚したり、婚前前に資格を失っているから、容器の中はもう空っぽになっているわ。でも、一人だけ時間内に回収できなかった羽があるの」
衣望里の心臓が嫌な音を立てて振動した。
衣望里の知る限り年上の従姉たちは既に結婚していて独身者はいない。
同じ歳の従妹も近くに住んではいるが、明るくて美人の美羽は、昔から男の子にもて、付き合いの派手さは噂にきくほどだった。
姉の羽音と結婚間近の婚約者とは、男女の関係であることは傍から見ていてもわかるほどに熱々だ。
考えるほど危険が自分に迫ってくるような圧迫感を感じ、衣望里は身を護るように両手を組んだ。
「どうして、その子のは保管できなかったの?」
「未熟児で生まれたからよ。すぐに保育器に入れられてしまったから、医療関係者以外は、その子に触れることができなかったの。二十四時間のタイムリミットが過ぎて、翼の乙女の印の翼が見えなくなってしまったの」
衣望里は、腕で囲っただけではカバーできない寒気を感じて、ぶるりと身を震わせた。
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