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井戸は教会の裏手にあるという。二つのバケツに水を汲んでくるよう伝えるとさすがに不服そうだったが、缶をちらつかせると渋々従った。
俺は寝室へ行くと旅荷物の中からライ麦パンとナイフを取り出し、聖堂へ戻った。水を汲んできて再び文句を言うレニャをたしなめながら、絞った濡れ雑巾で聖堂の椅子を一脚拭いた。
「まずかったら許さんぞ」
水汲みと拭き掃除をさせられたレニャは不遜な態度で椅子に座りこんだ。そもそも食材のほとんどは俺が用意したものではないというのに。理不尽極まりないが、些細なことで腹を立てて計画をだめにしてしまっても仕方がない。俺は内心呆れながらも黙って椅子に座ると、膝の上にパンを包んでいた紙を広げた。
ナイフでパンを切ると、断面にバターを塗り薄く切ったチーズを乗せた。これだけでも、旅の途中に食べていた味気のない食事からすれば、十分豪華だ。
缶を手にとると、隣に座っているレニャが身を乗り出した。
子供らしく期待に目を輝かせている様子だけを見れば、微笑ましいと言えなくもない。
力をこめるため缶を椅子の上に置く。ナイフを缶の上面の淵に当てると、柄の部分を手のひらでトントンと叩きながら小さな穴を開けていった。
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