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前任の司祭はよほどの美食家だったと見える。缶の中に食材を閉じ込めて保存する方法は、まだこの国ではほとんど流通していない。この缶も恐らくは異国の商人から買った物だろう。
中央都市にいた頃、一度だけ、たまたま街を訪れていた異国の旅人の道案内をしたことがあった。彼はお礼にと持っていた缶の保存食を開け、昼飯をご馳走してくれた。その時の仕草を覚えていた。
そういえば、あの時の旅人も浅黒い肌の色をしていたなと思い出した。ちょうど今目の前に座っている少女のように。
蓋の周囲にまんべんなく穴が空く頃には、既に隙間から芳しい香りが立ち上っていた。
レニャは既に涎を垂らしているが、そうでなくともこれは食欲をそそられる匂いだ。
手を切らないよう気をつけながら本体から缶の蓋を切り離すと、黄色いオリーブ油の中に、香草と共に桃色がかった橙色の魚の切り身が姿を現した。鮭の燻製の油漬けだ。
急かすレニャを宥めながら、切り身を一切れとってチーズの上に乗せた。その上に指で潰したオリーブを乗せ、仕上げに一つまみの胡椒、再びパンで蓋をすると目の前のレニャに差し出した。
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