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「覚えていないのか?」
静かに首を横に振る。
「中央都市で以前お前と同じような肌の色の旅人に出会ったことがある。ここから更に南東へ行った所にある国から来たそうだ。例えば、お前もそこから来たとか」
「わからぬ。じゃが、どこか遠くから来たというのは当たっておるかも知れぬ」
随分と引っ掛かる物言いだ。
「ここにはいつから?」
「さあ……三年前くらいかのう」
「三年前?」
思わず聞き返してしまった。
この教会はたしかにここ最近使われていた形跡がない。しかしそれは、せいぜいここ半年から一年以内の出来事のはずだった。積もった埃の量がそれを物語っている。
仮に三年もの間教会として使用されていなかったとしたら、建物は朽ち、倉庫の食品もほとんどがだめになっているはずだ。
つまりレニャは、ユフィリ教会から修道士たちが去り、もぬけの殻になってから住み着いたのではなく、少なくとも二年以上は修道士たちと共にここで生活していたことになる。
修道女でもない、どこから来たのかも分からない異国の少女が、なぜ。
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