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ふは、と沈黙を破って吹き出したのはレニャだった。
「お主、本当に何も知らんのじゃな」
彼女は可笑しそうにケラケラと笑っているが、その顔はなぜか泣いているようにも見えた。
「お主らはいつもそうじゃ。神妙な顔をして真面目そうに祈っとるが、本当は何も見えとらん。いや、たとえ見えておっても見えないふりをしておるのじゃろ?」
レニャは急に饒舌に語り始めた。が、何の話をしているのかさっぱり要領を得ない。
「もっともらしい理由を付けて自分たちにとって都合の良いものは愛し、悪いものは隠蔽する。善人のような面をしてやっとることは残酷じゃ」
彼女はどうやら修道士の話をしているらしかった。
「お主らが四六時中一所懸命祈っとる神様とやらもそうじゃ。一度も姿を見せず、なぜそやつがいると信じる? なぜ助けてくれると思う? はたして本当に何かをしてくれたことなどあったのか?」
「その辺に」
しておけよ、とは続けられなかった。ただ片手を前に出し制するような動作をした。口を開けば罵倒してしまいそうだった。
はっ、といつの間にか椅子から立ち上がっていたレニャがせせら笑った。
「所詮お主も何か縋りたいことがあるのじゃろう? 信じていればきっと神様が助けてくれると思い込みたいのじゃろう? じゃが、そんなものは――」
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