第一章 生贄と悪魔

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 俯いていた顔を上げると、まだレニャはこちらを見下ろしていた。青い瞳に浮かんでいる感情のすべてを読み取ることはできなかったが、一番濃い色は絶望の色だった。 「謝らぬぞ」  そう言い残すと、レニャは踵を返して聖堂を出て行った。重い扉の閉まる音が無人の堂内に響き渡った。  ふと椅子を見ると、半分食べかけのパンが置かれていた。
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