プロローグ

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     ワールド・オブ・イナヅマ      プロローグ  白いイナヅマの神と黒いイナヅマの神との間には、いつの時代にも熱い火花が散っておりました。彼ら、とっても仲が悪いのです。  申し遅れました、私、白いイナヅマの神に仕える、しがない天使の老いぼれであります。白いイナヅマの神の命を拝し、今度の『第六次イナヅマ紛争』の全容をここに、記録として残すこととなった次第です。 『第六次イナヅマ紛争』はちなみに、特殊なのであります。いつもは白いイナヅマの神と黒いイナヅマの神の些細な喧嘩に過ぎないのですが、今回はちと違って、人間界にまでそのとばっちりが及んだのであります。そうして、人間界というのは多種多様な感情の渦巻く、理と情の世の中でございますから、そういうわけでこれは面白そうだ、と天使仲間もこの記録を楽しみにして待っているようなのです。  これは少々困ったことでして、私、脚色を嫌うのです。脚色がなきゃあ、物語なんて読んでいて面白くないなんて、そんなこと私でも分かっております。それでもやっぱり、嘘はつけないたちですので。  そんなわけで、私が書くのはこの前書きと、事のあらましだけ。あとは、ぜーんぶ、当事者の人間たちにお任せしたわけなのです。彼らが思ったこと、感じたこと、ツラツラ並べて書いてくれりゃあ、これ以上の見世物はありませんから。  さあさあ、人間だろうが、天使だろうが、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。どうせわたくしゃ書かねえし、どう見てくれたって構いはしねぇ。むしろ私だって読者なわけで、あとは任せた人間どもよ。  天使と人間とがお互いの都合で絡み合った奇妙な寸劇、その名も『ワールド・オブ・イナヅマ』。ここに開演なので、あります! 注! 各章には通し番号がふってあります。
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