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 そんなこんなで時が過ぎ、季節は秋を迎えていた。文化祭の時期。と言っても、文化祭は文字通り文化系部活の活躍の場なので、別に新体操部としては特に何か出し物をすることはない。体育系部活や帰宅部の生徒は、クラス単位の出し物に参加することになっているのだ。僕達のクラスの1年1組は、模擬店でおでんを作ることになった。  別に料理は得意でもなんでもないのだが、なぜか僕は調理班の一人となってしまった。と言っても、どちらかというと材料の買い出しがメインの仕事だ。料理はやはり女子の方が得意な人が多い。佐藤さん改め「茉奈」(本人が令佳先輩と紛らわしいからそう呼べ、と言うので……)も調理班で、しかもリーダー的な立場にいた。味付けは彼女が行ったらしいのだが、時間をかけてきっちり煮込んだおでんはまさに絶品だった。どうも茉奈はおでんが大好物で、自分でもかなり研究して作っているらしい。  噂が噂を呼んで、他のクラスの生徒や一般参加の客が殺到する羽目になり、あっという間に僕達のクラスのおでんはどの具も売り切れになってしまった。だけど新体操部のメンバーは茉奈が予め情報を流していたためか、みなかなり早い時期に食べに来ていた。令佳先輩も「このおでん、ヤバいね! めっちゃ美味しいよ!」とニコニコしながら教室の中で食べていて、僕は嬉しくてしかたなかった。 「令佳先輩のクラスは、何やってるんですか?」僕がそう聞くと、 「あー、うちのクラスはね、メイド&執事カフェやってる……」と、苦笑いしながら彼女が応える。
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