14人が本棚に入れています
本棚に追加
/342ページ
2
市立体育館は学校から2キロメートルくらい離れた場所にある。自転車ならあっという間だ。放課後、僕は愛車 ARAYA マディフォックスCXにまたがり、体育館に向かった。
「あ、来た来た」
体育館の玄関でジャージ姿の佐藤さんが手を振っていた。僕も一応手を振り返し、駐輪場で降りて愛車にチェーンロックを掛け、彼女の下に向かう。
「なんか、高そうなチャリに乗ってんだね。マウンテンバイクってヤツ?」佐藤さんが駐輪場の方を見ながら言う。
「いや、クロスバイク。マウンテンよりも街乗り向きだけど、一応悪路も走れる。それに、これそんなに高くないし」
あご紐を外し、頭から愛用のヘルメットを降ろしながら僕は応える。僕のヘルメットはよくあるベンチレーションホールが沢山空いた、流線型でスタイリッシュなヤツじゃなく、ツバのついた地味なデザインのものだ。
「ふうん、いくらなの?」
「7万くらいだよ。入学祝いに買ってもらった」
「えー! それ、十分高いと思うけどなぁ。あたしのママチャリの3倍近くだもん」
おっ金持ちぃ、と冷やかすような口調で、佐藤さんが付け加える。
最初のコメントを投稿しよう!