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 市立体育館は学校から2キロメートルくらい離れた場所にある。自転車ならあっという間だ。放課後、僕は愛車 ARAYA マディフォックスCX(シークス)にまたがり、体育館に向かった。 「あ、来た来た」  体育館の玄関でジャージ姿の佐藤さんが手を振っていた。僕も一応手を振り返し、駐輪場で降りて愛車にチェーンロックを掛け、彼女の下に向かう。 「なんか、高そうなチャリに乗ってんだね。マウンテンバイクってヤツ?」佐藤さんが駐輪場の方を見ながら言う。 「いや、クロスバイク。マウンテンよりも街乗り向きだけど、一応悪路も走れる。それに、これそんなに高くないし」  あご紐を外し、頭から愛用のヘルメットを降ろしながら僕は応える。僕のヘルメットはよくあるベンチレーションホールが沢山空いた、流線型でスタイリッシュなヤツじゃなく、ツバのついた地味なデザインのものだ。 「ふうん、いくらなの?」 「7万くらいだよ。入学祝いに買ってもらった」 「えー! それ、十分高いと思うけどなぁ。あたしのママチャリの3倍近くだもん」  おっ金持ちぃ、と冷やかすような口調で、佐藤さんが付け加える。
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