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 だけど実際のところ、7万円はクロスバイクとしては決して高くない。そりゃママチャリと比べたら高いかもしれないけど……毎日通学で乗るからすぐ壊れるようでは困るし、通学路は結構上り坂もあるから、ってことで両親がそれなりのものを買ってくれたのだ。でも……それを全部佐藤さんに説明するのも、なんだか気が引けた。 「いや、別に金持ちってわけじゃないけど……」 「でも自分のカメラも持ってんでしょ? それも一眼レフの」 「それは叔父さんのお下がりだって。しかも十年くらい前のだから、めちゃ古いよ。そんなことはいいから、部活はどこでやってんの?」  これ以上佐藤さんにとやかく言われたくなかった僕は、無理矢理話を本題に戻す。 「ああ、こっちよ」  彼女に案内されて、僕は来客用スリッパに履き替え体育館の中に入る。途端にバスケットボールが床を打つ低い断続音が、雪崩のように鼓膜に襲いかかってくる。それとは対照的に甲高い、ホイッスルの音色が館内の空気を切り裂く。
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