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アリーナではどこかの男子バスケチームが練習をしているようだった。佐藤さんはその様子には目もくれず、アリーナの端を早足で通り抜けて隣の建物への渡り廊下に入る。その向こうのドアの横には、縦書きでこう書かれた看板があった。
体操練習場
佐藤さんがドアを開ける。僕も彼女に続いて中に入る。
そこはアリーナの半分くらいの広さの空間。平均台や吊り輪、平行棒、跳馬などが詰め込まれていたが、それらを使っている人は誰もいなかった。だが、床運動用のマットが敷かれた十五メートル四方くらいの空間に、五人くらいのジャージ姿の女子がいて、思い思いに柔軟運動をやっていた。
「令佳先輩!」
佐藤さんが声を上げると、その中の一人が振り向く。
「ああ、茉奈ちゃん」
言うなり、その人物がこちらに向かって小走りに駆けてくる。
「!」
その姿を見た瞬間、僕は息を飲んだ。
髪を後ろにまとめて縛っているが、間違いない。
それは、僕が一目惚れした、女神さま。
生徒会副会長、佐藤 令佳先輩だった……
「君が浜田 悠人君ね? 私は二年二組の佐藤 令佳。新体操部の部長よ。よろしくね」
僕を真っ直ぐに見つめながら、あの美しいアルトの声でそう言うと、僕の目の前で女神は魅力的な笑顔を見せた。
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