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ヤンキーが扉を開けて指差している
なんか馴れ馴れしい…俺はその開けられた助手席じゃなくてその反対側の後ろの席に座った
「フッ」
なんかあのヤンキーが笑ったような声がした
ヤンキーは俺の方の扉まで来てリュックを取って助手席に置きやがった
「な、なにすん…ですか!」
「座りづらいだろ、まぁ警戒すんのは良いけどあんまり尖んなよ…嫌がる人もいるから」
それから扉をしめてエンジンをかけると
俺の方を二やっと見てきてブーンとエンジンをふかしてみせた
バイクじゃねぇんだぞ、だけどもしかしたら変なとこに連れ去られてって事もあるから
おとなしく乗っておく
おかんが涙をぬぐいながら手を降るのが見えなくなるとヤンキーは安全運転になった
「お前名前は?」
「………」
「はは、そうだよな俺から名乗るべきか
俺はゲコって呼ばれてる土志田だ、で?」
「名前は……ねぇよ…」
俺はおかんから呼ばれたこともない
呼ばれていた記憶も…覚えてない
愛されてる実感も…実の親じゃねぇんじゃねぇかって、親父なんてそもそもいないんじゃ
信号で止まるとそれから動こうとしない
気づいたら信号じゃなくて横にそれて止まっていた
「わりぃ…聞いちゃいけないこと聞いちゃったか、ゴメンな……じゃあそうだな…少年じゃ嫌だよな…ならゲコってな下に戸って書くんだ、トシロウでいっか」
「どうしてそうなんだよ、あ、なるんですか?」
ヤンキーはまたフッと笑って
エンジンをかけた
「その方がいいと思うぜ俺は…いやほらあの人たちに紹介すんのにさ少年Aじゃやだろ?だからトシロウだ、あんま緊張すんな
面白い人たちだらけだから」
「俺はそこで何を…」
「ほら着いたぜ」
そこはよくありそうなホテル?みたいな建物だった受付があって中で部屋が分かれてるような…
でかい門があってそこの前で男が立っていた
ヤンキーは窓を開けて身を乗り出す
「お、斎藤さん…こいつが新しいえっとトシロウっすよ…今日誰々がいますか?」
なんか男は紙を出して名前のところに何回か指を当てている…喋らねぇのか?
ヤンキーはそれをマジマジと見ては頷いてる
あ、男と目があった…紙と俺を見合わせながら俺の方に来て窓をコンコンしてきてる
「な、なんすか!」
無口男は紙を指差してる、知らねぇ名前が並んでた
「知らねぇよ!だから」
「ハァァ怒るな、斎藤さんはトシロウ君に誰がいるのか教えてるんだよ…まぁ入れば分かるか、すんません斎藤さん…まずは入れて貰えますか?」
無口男はヤンキーを見て頷くと俺をチラチラ見ながら門を開けた
おいおい、こんなやつがいるとこで何がおこんだよ
駐車場に止まると無口男は追いかけてきてドアを開けてきた
俺が降りるのを見送ってからドアを閉じてリュックを見つけたのか助手席のドアを開けて
取り出した
「あ、あの!」
チラッと俺の方を見てからリュックを助手席に置き直した
ヤンキーは俺のとなりに来て
「取らねぇから自分でとっていいってさ」
俺はリュックを取り出して無口男を睨んだ
無口男は生意気ににらみ返してきた
「ありがとうございます!」
キョトンとした顔しやがった、ヤンキーはひと足先に玄関まで行っていた
ほんと何なんだよここ!
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