機憶の彼方の君へ

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 そこから私達の部内活動は始まった。LDHの日本予選に向けて、パーティのチーム分けのための練習が始まった。  LDHは最近のアップデートで、最新型VRゴーグルに対応。耳の付け根に当てたセンサーから、視神経など五感を直接刺激して仮想空間を現実のように体感できる完全没入型RPG。無数のダンジョンが存在し、シーズンに合わせてイベントダンジョンも用意されている。   「今日はこの砂漠エリアにあるダンジョン[ウィデザード]の攻略を進める。ここで獲得したスキルに合わせてチーム分けを行う」  ここには新しいスキルが手に入る宝箱がたくさん隠れているみたい。色分けされた宝箱は、赤だと攻撃系、緑だと癒し系など、異なるスキルのアイテムをゲットできるようになっている。  私はフェアリーキャラクターに防御系の宝飾鎧をまとい、下はミニスカートのままで挑んだ。VRMMOもファッションの時代、少しでもかわいく見せる工夫も醍醐味のひとつ。 「今日のあやめちゃん、すごくかわいいね。なんかあるの?」 「別にそういうわけじゃないけど、たまにはオシャレもいいかなって……」  本当は鳴海先輩に少しでもいいところ見せたくて頑張ってみた……なんて言えない。 「きゃあ! ミ、ミイラがいっぱい!」  ダンジョンを進むと、骸骨が露出したミイラが重なりあって、眠っていた。  思わず成海先輩の腕のすそを握ってしまった。 「あやめさん、大丈夫?」 「え、あ、ごめんなさい、掴んじゃいました」  パッとすぐに手を離した。顔が赤くなるのを感じた。 「別にいいよ、心配ならちゃんと腕を掴んでおいて」 「え、じゃあ、お言葉に甘えて」  今度は腕を両手でギュっと握った。怖いけど、ちょっとうれしい、胸がドキドキした。 「崖があるから、みんな気を付けて」  岩の瓦礫の通路のすぐ横には大きな谷が見えた、ここに落ちたらどうなるんだろう? 「危ない! 上から落石が」  誰かの叫び声に、目を上にやると、大きな岩が目前に迫っていた。思わず体を後ろによじると、足元が砂ですべって、重心を崩してしまった。 「きゃあ」  体制を崩したまま、足を踏み外し、崖下のほうへ滑っていく。鳴海先輩の腕を握っていたので、一緒に落ちていくことになってしまった。  ガラガラと音を立てながら、私と先輩は転げ落ちていった。
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