機憶の彼方の君へ

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 夏休みに入り、いよいよ今日は待ちに待った合宿当日。  高校近くの駅で集合、そこから電車を乗り継いで、海岸近くの駅からバスで15分ほど走ったところに、別荘はあった。  海岸近くの別荘だけに、大きなベランダがあり、目の前には海が広がり、太平洋が一望できた。 「うわーすごい! こんなところで合宿できるなんて、夢みたい」 「朝は水平線から日が昇ってきて、綺麗な朝焼けが見えるよ。普段あまり使われていないから、まずはみんなで大掃除だな。それが終わったら、合宿のミーティングをしよう。そこでパーティの組み合わせの発表もするよ」  みんなでほうきと雑巾を手にして、各部屋の隅々まで綺麗にして回った。二時間ほどで終わり、ベランダで海を眺めながら、お茶をしていると、もう辺りは夕焼けに包まれていた。  蝉の泣く声が、ここではとても心地よく思えた。 「それじゃあ、ひと休みも済んだことだし、ミーティングを始めようか。みんな部屋に入って」  鳴海先輩から声がかかり、みんなでリビングルームに集合した。 「さて、今夜はいよいよLDHの日本予選です。これまでの練習の成果を思う存分、発揮しましょう。まずはパーティの発表から」  各パーティのメンバー組み合わせが書かれたA2ポスターが張り出された。 「私はどこかな……えーっと、あ! 鳴海先輩と一緒?」  両手を口に当て、思わず歓喜してしまった。これは……見られたかなーと少し不安げに、先輩を見つめた。  先輩と目が合うと、「ああ」と何かを理解したかのように、笑顔で答えてくれた。 「あやめちゃん、ごめん、君はスキルがまだ足りないから……僕と同じパーティで頑張ってもらうことにした。心配しなくても、しっかりサポートするから、思いっきり楽しんで」  ああ、そうですよね、私が一番足手まといだった。何かの運命かと期待した自分が恥ずかしい…… 「今回の日本予選のダンジョンエリアは南洋の孤島[エメラルダス]。ここに隠されている伝説の(つるぎ)、マーメイドソードを手に入れたパーティが優勝になる。どこを探索していくかなどはマップが事前公開されているので、各パーティで検討しておいて。あと、何があるかわからないから、くれぐれもパーティから離れないように」
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