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この国で、お江戸の時代は約二六五年間続いたそうで……。
素晴らしい。天晴です。
ただ、いまここで、ひとつのご縁の元お見せするのは、ちょっと狂った、そのへんの時代のお話――。
竹取の翁は、我が子可愛さにその手を離さず、都には移さなかった。余計な嫁取り合戦は起きずに、輝く姫は竹の元で健やかな生涯を送った。え?
――不死の山? それは、弥勒様が良い名を授けたのではないでしょうか。……いえ、知りませんけど。
この時代は、ちょっと複雑。ちょっとおかしい。
作り方は、いたって簡単。
田植えの頃に苗床を寝かせ、手織りの錦を敷き詰める。
いくつかの昔話を刈り取って、獅子の前足ぐらいに、揃えて、散らかす。
狛犬の尻尾ほどに豊かにさせて、三日月ぐらいに細めてやって。
明治も平安もとろとろ溶けて、そこに室町をひとさじ入れて、お江戸囃子を利かせたら……さぁ、できあがり。
色街、遊郭、極彩色の座敷牢。
折詰られたのは、賢く美しい女達。
奥座敷の主役たち。
それを夢見る、禿になれなかった、幼い子供。
主役ではない、影になった幼い子供。
その子の願いはただひとつ。
叶えられる神様もただひと柱。
どうか拙い願いが、叶いますように。
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