【第二話 メイルとの約束】

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 しかし、母コンキリエは憮然とした表情だった。  それを察したのか、シャルルが続けた。 「まあ、我々シャーマンは身分で人を区別しないのが信条だ。奴族であろうが、皇族であろうが、メイルにとってよければそれでいいんだ」  それを聞いた母コンキリエは吐き捨てる様に言った。 「でも、奴隷は奴隷です。メイルの話相手としては、私は反対です」 「まあ、長い目で見てやってくれ。今日は始めての食事だ。さあラン君。席に付きなさい」  その時、突然母コンキリエが立ち上がった。 「今日は気分が悪いので、私はいりません」  そして、ランを睨みつけて、食堂から出て行った。  蔑まれる目線になれていたランだったが、コンキリエのそれは心に突き刺さった。  メイルは 「ごめんね。ママちょっと体調が悪かったみたい」  と言ったが、ランは居たたまれず 「ごめんなさい」  と言った。  それを聞いたメイルは堪りかねて言った。 「ねえラン」 「はい」 「一つだけ約束して欲しいな」 「あ、はい」 「私に対しては『ごめんなさい』は禁止。いい?」 「はい。でも……」 「だって、ランはここに来てから一つも悪い事してないよ。なのにすぐ『ごめんなさい』って、変だよ。それに、何か距離を感じちゃうんだよね、そう言うのって」 「距離、ですか」 「うん。あと出来れば丁寧語もやめて欲しいんだけど、まあ、それは後でいいや。とにかく、私とランは友達なんだから、距離を縮めたいの」  父シャルルはそれを聞いて笑った。 「ハハッ、それは面白いね、メイル。ラン君、約束出来るかな?」  ランはゆっくり頷いた。 「はい」 「じゃ、食事にしよう。コンキリエは席を外したが、そのうち分かってくれるよ」  そして、ランはドーリに促され、食事の席についた。  ランにとっては、生まれて始めての人間らしい食事だった。 「いただきます」の後、ランはスープを慣れない手つきで口に含んだ。 (わあ、おいしい)  そのあまりの美味しさに、スプーンの動きが止まらなくなった。  メイルとシャルルはそれを微笑んで見ていた。  ついでに言っておくが、この時のランの食べ方はひどい物だった様で、後でドーリにテーブルマナーをがっちり叩き込まれるハメになったのは言うまでもない。
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