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「そりゃ、百年以上もこうしていれば、お前の考えていることなんか、わかりたくなくても手に取るようにわかるんだよ。それで、あの奥さんに何をしてあげたいんだ?」
「それなんです」
「俺たちは自由に動けないんだぞ」
「そこなんです」
「だから、いつも言っているだろう。俺たちはまよえる人間たちが唯一、本音で願いごとができる、この場所を守ることしかできないんだ、って」
うんれつが諭すよう言うと、すぐにあじゅりの声が返ってきました。
「わかってます。今までさんざん考えてきましたから。でも、つい今しがた浮かんだんです。あの奥さんの願いをかなえてあげるいい方法が」
あじゅりは、あたりに誰もいないのがわかっているにもかかわらず、まるで重大な秘密を明かすかのように声をひそめました。
「祭神さまです。祭神さまにたのむんですよ……」
「……」
「いいですか。よく聞いてくださいね。まず最初に祭神さまにたのんで、私たちを自由に動き回れるようにしてもらう。そして、万病に効くというくすりをいただく。その薬を病気の女の子に渡して飲んでもらう。そうしたら女の子の病気もあっ、という間に治って、あの奥さんの願いをかなえてあげられる。……どうです。いい考えでしょう。なんで、こんな簡単な方法を思いつかなかったんだろう。まったく、自分の頭の悪さには、ほとほと嫌気が差します」
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