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「確かに、うんれつさんの言うとおり、神殿の中で寝転がっているばかりで、働いている姿を見たことがありません。天気の良い日にふらっと出てきては、神殿から鳥居までの参道をぶらぶらしながら、あの低いとおる声で、しっかりと邪悪なものからこの神社を守るのだぞ、って言い残してまたすぐに戻っちゃう。神様が願いを聞き入れて、叶えてくれると信じているからこそ、人間が参拝しにくるのに……」
だんだんとあじゅりの心が落ち込んで声が低くなるのとは対照的に、勢いのついたうんれつの声は、どんどん大きくなってきました。
「今にしてようやくわかってくれたか、あじゅり。祭神は怠け者、かつ、詐欺師だ。だって、そうだろう。自分では何にもしないで、ただただ、神殿でゴロゴロしてやがるだけなのに、参拝する人間から賽銭を巻き上げては、宮司や巫女や俺たちをこき使ってやがる」
――コホン、――
突然、乾いた空せきがひとつ、冷気で張りつめた境内に響き、その後に条件反射のごとく瞬時にあじゅりの叫び声が続きました。
「げっ、」
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