織田先生はなぜ授業参観を休んだのか

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 理科準備室のドアを開けると、中には木の椅子が上に乗った大きな黒いテーブルがある。壁沿いには、実験器具などが詰められた棚がいくつもある。  織田先生は、窓際の日が当たる部分に気の椅子を下ろして、そこで小難しい本に読みふけっていた。  岩上先輩が先生に向かって「織田先生」と呼びかけた。本に集中していた織田先生は声に反応して俺たちを見る。そして少し目をひそめるとやっと俺たちに口を開いた。 「君たちは新聞部だったね。名前は確か――」  織田先生は俺たちのクラスと名前をピタリと言い当てた。言っておくが、俺たちはそんなに織田先生と喋ったことはない。岩上先輩にいたっては、倫理の授業の担当が違うため初対面に近いはずである。 「よく名前がわかりましたね」  俺は言った。 「あぁ。もちろんだ。この学校の生徒のクラスと名前は全員把握している。一応、教師だからな。ちなみに、君が居眠り常習犯だということも知っているよ。私の授業で見たことはない。集中はしていないようだが」  織田先生には俺がまったく授業を聞いていなかったことがバレていたようだ。先生はなぜ私の居場所が分かったのかと俺たちに問いかけた。進藤が前に出て、それに答える。 「先生方に聞きました。織田先生がいつもここで本を読んでいると。それに今は、織田先生はときの人ですからね。そのやじうまを避けるためにもここは最適だと」  進藤の話を聞きながら織田先生は小さくうなずいていた。そして最後まで話を聞き終わると、手に持っている本をパタりと閉じてテーブルに置いた。  織田先生がテーブルの上の椅子を下ろし始める。三つほど下ろし終わったところで、そこへ俺たちを座らせた。 「君たちが聞きたいのは、私が学校を初めて休んだことだな。いいだろう、ここを突き止めた君たち新聞部には包み隠さず話すことを約束する」  そう言って、織田先生は俺たちをまっすぐ見つめた。
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