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「あーん!部費用減らされちゃったぁ……慰めてぇ」
岩上先輩が俺に抱き着いて締め上げてくる。ハイムリック法並みの愛の抱擁は完全に俺を絞め殺しに来ていた。
「いたたたたたたぁ!はなれろはなれてはなれてくださぁい!大体当然じゃないですか!実績もなんも上げてないんですから部費下げられてもしょうがないですよ!」
慌てふためく俺を見て、進藤は腹を抱えて爆笑している。この腐れメガネが。
「だってしょうがないじゃない。うちの新聞部は三人しかいないの。そのなかのひとりは打ち込みしかやりたくないっていうぐーたらだし、私の恋人になってくれないし」
最後のは全く関係ないと思うんですが。
岩上先輩をなんとか引きはがし、織田先生の話へと戻る。
「病気って線はなくはないですね。だとしても、風邪はありえないでしょう。織田先生が風邪ごときで休むことはありません。もし風邪なら防護服を着てでも登校しますからね織田先生は」
進藤は冷静に情報を分析している。
「つまり、病気だとしたら、それなりに重いものだってこと?」
岩上先輩が何事もなかったかのように進藤に問いかけた。ちなみに俺はこの間、この二人の横で腹をおさえながら悶えていた。
しかし、この二人はそんなことを気にせずに分析を続ける。
「昨日病気を宣告されてあまりのショックに今日学校を休んだ。というのはありえますね。織田先生も人間ですから、命に関わるとなればさすがに動揺するでしょう」
進藤の話を聞いたあと、岩上先輩は少し考え込んだ。これはただの推測であって、なんの信憑性もない。ときおり、こういった不確かな情報のまま新聞にするというがいるが、残念ながら我が新聞部はいつだって真実以外は記事にしない。
岩上先輩は、悶えている俺の顔を覗き込んでどう思うか聞いてきた。この人は数分前に俺にしでかしたことをすでに忘れている。
「え?なんですか?病気?あぁもうあれですよ、痔とかですよきっと」
正直、この瞬間の俺に色々考える余裕はない。ただただ腹の中から何かが出そうなのを堪えるばかりである。
その後、俺たちはいくらかの生徒に質問をしたが、これと言って面白そうな情報はなかった。最終的にやはり、本人から聞いてみるのが一番良いという結論に至った我々は、本日の調査を負傷者一名という形で終えたのだった。
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