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本編
強気なキミが苦手なもの。雷、怖い話、虫全般。
強気なキミが苦手なもの。またひとつ知るたびに愛おしくなる。
だからもっとそばにいて、色々知りたいんだ。
だけど時は無情にも過ぎて、ひとつの季節が終わりを告げた。
「一ヶ月間、お疲れ様でしたー!」
店長の掛け声で、皆がワーッと湧き上がる。
住み込みでバイトをしていた海の家が、シーズンオフと共に閉店を迎えたのだ。
さみしいね。と言うキミの言葉はボクに向けられているわけではなくて。
さみしいな。そう思うボクの気持ちがキミに伝わることもない。
その日々が楽しければ楽しいほど、さみしさは募って。
弱気なボクはキミに気持ちを伝えられず、連絡先を交換することすらできなかったね。
引越しの荷造り中に見つけた一葉の集合写真が思い出させる、あの日の暑さ、潮の匂い、にじむ汗にまとわる砂のザラついた感覚。
そのすべてが懐かしくて、とても愛おしい、ひと夏の恋ーーだった。
end
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