第一話 砕け散った想い

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立花さんは、突然横に近づやってきた中川に驚き、ビックリした顔で振り向いた。 「ねぇ。今度、俺らの大学で学祭あるんだけど、よかったら遊びに来ない?」 「え?」 「俺ら軽音サークルでさ、歌唄うんだよね。それ、立花さんにもぜひ聴きに来て欲しいなぁ~って思って」 「は……はい。そうなんですね。ありがとうございます。それは、ぜひ行きたいです」  中川さんは、いとも簡単に立花さんを誘ってしまった。 どや顔をした中川が、俺の方を振り向き、指でOKのサインを俺に送ってくる。 自分で誘えなかったことが少し複雑ではあったけど、学祭に来てもらえることで、嬉しさがこみ上げてきた。 でも、この時の俺はその喜びも次第に自分の思っていたのとは、違う方向に進んで行くことは、全く想像していなかった。  学祭に来てくれたことを、きっかけに俺達や、立花さんやその周りの仲のいい子達とは一気に距離が縮まったものの……。 俺は相変わらず、奥手のままでで立花さんに話しかけることもままならずでいた。 他のみんなとは、ワイワイと楽しく話せるのに、どうしても意識しすぎて、彼女とは一対一で話す勇気はなかった。 それに、なんとなく気づいてはいた──。 立花さんが、いつも中川のことばかりを見ていることに。 いつも華やかで人気者の中川に、立花さんが惹かれるのはある当然だった。 (それに比べ俺はなんでこんなに地味な性格になんだろう……) きっと、立花さんの中では俺は中川の周りにいるその他大勢だったに違いない。 そして……ついに悪夢は訪れた。    その日は、英会話教室の帰りによく遊びに行くメンバーで、流れで花火大会をやろうということになった。 みんなでお金を出し合い、しこたま買い込んだ花火を持って、俺達は公園でガキのように、はしゃぎまくっていた。 これから、花火をしようと思った時に火をつけるものがないことに気づいた。  誰かライターを持ってないか、聞こうと思って振り返えると、ベンチに座っている中川とその前に立っている立花さんが視界に入る。 「なー中川、ライター持って……」  そう言いながら、中川に近づいた時…… 「……きあってください」  後姿の立花さんの声が、かすかに聞こえてきた。 「えっ……?」  (今、何て言った?) 中川の方を向いたままの立花さんは、俺が近づいてきたことには全く気づいていないようだった。
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