45人が本棚に入れています
本棚に追加
第22話 繋がる思い
重い荷物を、引きずるように抱えながら家に帰り着くと、一通の手紙が届いていた。
田舎留学に行く前に、求人を見て履歴書を送っていた会社からの返信だった。
(どうせ、また、不採用の連絡なんだろうな……)
職種的には私のキャリアを活かせる会社だとは思ったけど、まずは書面での応募だったからきっと応募もたくさん来て競争率も高く、半分諦めていた会社だ。
そう思いながら、封を開けてみる。
中に入っていた紙を広げて、目を通すと書面には……。
「ぜひ、採用をと考えております。一度面接をお願いしたいと思いますので、ご足労おかけいたしますが、当社の方までおいでくださいますようにお願いします」
(え? これっていつ届いていたんだろう? 面接っていつ?)
あわてて日にちを確認して、ふーっと息をついた。
面接の日付は2日後になっていた。
(よかったぁ……間に合った)
よかったけど、まだ帰ってきたばかりで、すぐには気持ちが切り替わらない。
(早く現実の世界に戻らなくっちゃ)
まずは、荷物をバッグから出し整理をしようと思い開けた。
ふとその時ポーチにつけた、瑞樹ちゃんからもらったマスコットのお守りが目に入る。
そっとポーチを持ちあげると、マスコットがとぼけた顔してプラプラと揺れる。
(これ……。確か恋愛のお守りだったよね?)
手に取りそのとぼけた顔が愛らしくて、思わずクスっと笑う。
「ちゃんと守ってね。お願いしますよ」
私は、マスコットを指でツンツンとつつきながら願懸けをした。
ポーチと一緒に入れておいたスマホが気になり手に取ってみた。
そのまましばらく画面を見つめる。
「沙也ちゃん。……必ず大貴には連絡するんだよ」
別れ際に祐太さんが心配そうにそう言った。
「うん。わかってる」
私がそう答えると、祐太さんは安心したように頷きにっこり微笑んだ。
ちょっとおせっかいで友達思いで、人懐っこくって、いつも明るい笑顔でいっぱいの祐太さんが好きだなと思った。もちろん友達として。
(いつ連絡しようかな……)
今日はまだ仕事で立て込んでいるかもしれないから、やめようと思った。
大貴さんとの、過去のことをまた少し思い返してみる。
あの時、彼の横にいたはずの大貴さんの姿は、今まではぼんやりしていて、あまり思い出せなかった。
でも、もう一度一つ一つの出来事を、思い出していく内にスーッと霧が晴れたかのように見えてきた。
最初のコメントを投稿しよう!