第22話 繋がる思い

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 いつも優しそうな顔して、ニコニコと笑っていた。  私が、落としたペンを拾ってくれたこともある。  私が教材を忘れた時に、貸してくれたこともある。  何かを話してて、優しく微笑んでくれた笑顔  そして、何か言いたげな顔して、私のことを見ている姿  どこまでが記憶なのか、どこまでが私の空想なのかわからないけど、あの頃、確かに一緒に同じ空間で過ごしていたことは確かだ。 (本当になんで、大貴さんの気持ち気づかなかったのだろう) もし、もう一度、あの頃に戻れたらきっと私は迷わず大貴さんを好きになるだろう。 あの頃に戻れるなら……。 (……そうだ!)  私はあることを思いついた。 (でも、連絡をするのは、この面接が終わってからにしよう……) すぐにでも会いたい気持ちをおさえ、まずは目の前の荷物を片付けと、面接に行くための準備もしなくてはいけないのでそれを優先することにした。 (そうだ、髪の毛も切りに行こう)  肩まで伸びた髪を、手で触ってみる。 最後に切りに行ったのは、いつだったろうか? まだ、仕事を辞める前だったから、だいぶんたっている。 (予約取れるかな……?) さっき手に持ったスマホで、いつも行っているお店に予約をピピっと入れる。 「よし!」  スマホをテーブルに置き、自分に気合を入れように太ももをポンと叩き立ちあがると、テキパキと片づけを始めた。  二日後――  面接終えた私は、一息つくために帰り道にあるカフェに立ち寄った。 ログハウス風な店内の雰囲気がどことなく、あの日大貴さんと行ったカフェにちょっと似ている。 (今日は面接頑張ったご褒美だね)  私は自分にそう言いながら、アイスティーとチーズケーキを注文する。 面接といっても、もう採用を前提での話だった。 話はトントンと進み、来週から出勤することも決まった。    田舎留学から帰ってきてからこの二日間、これからのことをじっくり考えた。 仕事のことも、大貴さんとのことも。 怖がらずに、どんどん進もう――。 そう思った。 今回の田舎留学で経験したことが、気持ちを前向きかえてくれたことは間違いない。 出会った人達にもいっぱいエネルギーをもらった気がする。 そして大貴さんとのことで、ある考えが浮かんでいた。
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