第五話

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 誰もが、モデルさんが亡くなるのは惜しいのだろう。友達が悲しむ顔を見たくない。  美波がモデルさんを助けようとしたのは、友達やファンのためだけじゃない。  モデルさんが自殺を成功させたから。モデルさんというのは関係なく、その場で成功した理由が必要なのだ。美波も同じ方法で死ねるという安心感があった。  中々自殺まで踏み込めない美波。モデルさんの死により死が軽く感じ、近い存在となった。  モデルさんの自殺したい理由は分からない。反対に美波には自殺したい理由がちゃんとある。  高校時代に複数の女子からイジメを受けてきた。 「きゃははは、ざまぁみなさい」 「めちゃくちゃ濡れてるじゃん、笑える」  複数の女子が投げかける言葉たち。  水色のホースを蛇口に取り付けてひねる。水の先には美波がいる。思いっ切り制服が濡れるくらいに水をかけられた日もあった。  なんで数人の女子から嫌われたか分からない。  時には変な男子との噂を流されて周りの女子が離れていった。  そのトラウマから美波の友達や知り合い以外の同性は反射的に無理なのだ。  接客業のバイトは克服するためのものだ。  たまに夜の暗さでイジメられた記憶が蘇る。夢の中まで入ってきてイジメてくるのだ。  もう自傷行為を通り越して自殺行為をしたい。自殺をしてトラウマや同性に対する恐怖心から開放されたい。  今回のことはモデルさんが自殺行為をするのは同じだと思った。死にたいという気持ちがあるんだと知った。  だから探し回ることにした、モデルさんが自殺を成功した場所をーーー  最低なのは、分かる。こうでもしなきゃ自殺行為の失敗を恐れ、踏み出せない自分自身に目を向けられない。
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