誓い

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誓い

俺はこの世の刑務所に来ていた。 十数年前、最初に担当したあの受刑者が出所するという。 俺に会いたいそうだ。 正門から出て来た、元・受刑者は変わり果てていた。 まだ40代だというのに、還暦をとっくに過ぎたような顔をしている。 声を掛けると、男はかすれ声で挨拶をし、頭を下げた。 「羅鬼(ラキ)課長、ご立派になられて。あなたのお陰で出所できました」 「ここでは、『アラキ』ですから。頼みますよ」 俺が新入りだったころの課長と課長代理は、仕事熱心が度を越していた。 不当な刑罰を囚人に課し、データの改ざんをして、懲戒処分となっている。 俺は単に内部告発者の一人となっただけだ。 腕時計を見る。 20年前、男の子が悲鳴を上げた時刻だ。 あと5分。 「この後は?」 「とりあえず実家に帰って。それから考えます」 男が刑期を終えられたのには、理由があった。 「あのな、墓参りに行けよ」 殺された子供が転生時の願い事として、男の刑期を20年とするよう望んだのだ。 理由は分からない。 男は「必ず行く」と誓いを立てた。 果たされない誓いほど、虚しいものはない。 あと2分30秒。
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